産後の腰痛とインナーマッスルの関係|なぜ体幹を支える力が大切?
こんにちは。
郡山市の美翔接骨院、院長の川上です。
8月11日(火・祝)から16日(日)まで夏季休業をいただいておりましたが、本日8月17日(月)より通常通り営業を再開しております。
休業期間中は大変ご不便をおかけいたしました。
本日よりまた、皆様の身体の健康を全力でサポートしてまいります。
お盆期間中、ご家族で帰省されたり、少し遠出をして長時間車に乗ったり、普段以上に赤ちゃんやお子さんを抱っこする機会が増えたママも多かったのではないでしょうか。
ご家族みんなで過ごす楽しい時間であった反面、
「お盆休みが終わったら、なんだか腰が重くて辛い……」
「連休中の連続抱っこで、背中から腰にかけてガチガチになっている……」
と感じていらっしゃる方も多いかもしれません。
ご家族のお休みやイベントごとは、ママにとって必ずしも「身体を休める時間」になるとは限りません。
むしろ、普段以上に動くことが増えて疲労が蓄積しやすい時期でもあります。
まずは、この一週間ご自身の身体を酷使して頑張ったご自身を、しっかり労わってあげてくださいね。
さて、前回の記事では「産後のインナーマッスルはいつから鍛えていいの?」というテーマでお話ししました。
産後は「〇ヶ月経ったから全員スタート」といった月齢やカレンダーの数字だけで焦って始めるのではなく、お一人おひとりの身体の回復状態を見極めながら、段階的に進めていくことが何より大切である、という内容でした。
今回はそこからもう一歩深く踏み込んで考えていきましょう。
そもそも「なぜ産後の腰痛とインナーマッスルが、そこまで深く関係しているのか?」というお話です。
「腰が痛いなら、腰の筋肉をグイグイ揉めばいいんじゃないの?」
「やっぱり腹筋が弱くなっているから腰が痛くなるのかな?」
そんな疑問をお持ちのお母さんにもスッキリご理解いただけるよう、毎日のリアルな育児動作と照らし合わせながら、順を追って紐解いていきます。
そもそも「インナーマッスル」って何?
テレビや雑誌、SNSなどで「インナーマッスル」という言葉を耳にする機会はとても多いと思います。
しかし、人間の身体の中に「インナーマッスル」という名前の筋肉が一つだけ単体で存在しているわけではありません。
一般的にインナーマッスルとは、身体の深いところ(深層)に位置し、関節の位置を安定させたり、体幹を支えたりする働きに関わる筋肉群をまとめて指す言葉として使われています。
特に身体の中心である「体幹(お腹まわり)」において重要な役割を果たしているのが、以下の代表的な筋肉です。
- 腹横筋(ふくおうきん):お腹の最も深い部分をコルセットのようにグルリと巻きついている筋肉
- 多裂筋(たれつきん):背骨に細かく付着し、背骨同士の安定性を保つ筋肉
- 骨盤底筋群(こつばんていきんぐん):骨盤の底部でハンモックのように内臓を下から支える筋肉
これらは、重いものを持ち上げたり、力こぶを作ったりするときのような「目に見えて大きな力を出すこと」が主な仕事ではありません。
むしろ、立つ、歩く、かがむ、物を持ち上げるといった日常のあらゆる動作の中で、「身体の中心軸が必要以上にグラグラ揺れないように、内側から固定・安定させること」が最大の役割です。
イメージとしては、身体をダイナミックに大きく動かす表面の筋肉(アウターマッスル)が「車のエンジン」だとすれば、インナーマッスルは「車のフレームやサスペンション(土台)」にあたります。
土台がグラグラな状態でどれだけ強力なエンジンを回しても、車体全体に無理な負担がかかって壊れてしまいますよね。
そのため私は、「一般的な腹筋運動が何回できるか」という筋力測定のような話とは切り離して考えた方が、産後の身体の仕組みを正しく理解しやすいと考えています。
妊娠・出産を経ると、身体の使い方は大きく変わります
「産後、なんだか姿勢が悪くなった気がする」 「昔と同じように身体が動かせない」
そう感じているママは非常に多いです。それもそのはず、妊娠から出産に至る約10ヶ月間の中で、お母さんの身体の使い方や重心の位置は劇的に変化しています。
妊娠中は、お腹の中の赤ちゃんの成長に伴い、前へ前へと大きくお腹が膨らんでいきます。
すると、身体の重心が前方へ大きく移動するため、人は倒れないように無意識のうちに妊娠前とは違った立ち方や歩き方でバランスを取るようになります。
- 背中や腰を強く反らせて、重いお腹を支える(反り腰姿勢)
- お腹を前に突き出すようにして立つ
- 足の幅を広く開いて、ペンギンのように歩く
これらは一見すると「悪い姿勢」に見えるかもしれませんが、急激に大きくなるお腹を落とさずに支え、転倒を防ぐために身体が必死に適応しようとした結果なのです。
そして重要なのは、出産したからといって、翌日からすべての筋肉や姿勢の使い方が、自動的に妊娠前とまったく同じ状態へ戻るわけではないということです。
妊娠期間中、お腹が大きくなることによって腹部の筋肉は長い間ずっと引っ張られ、伸びきった状態が続きます。
場合によっては、腹部の真ん中の筋肉が左右に開く「腹直筋離開」が生じることもあります。
産後の腹部や骨盤底の状態には大きな個人差があり、傷の回復具合や組織の弛緩度合いも人それぞれです。
そのため、いきなり強い負荷をかけるのではなく、深い腹部の筋肉や骨盤底筋を穏やかに使うような優しい運動から案内されることが一般的です。
つまり、産後のお身体について考えるときは、
「筋肉が落ちてなくなった」というより、「妊娠・出産を経て、身体の支え方や使い方のモードが変化したままになっている」
と捉えるのが、とても自然で正確な見方です。
しかも、そのように身体の使い方が大きく変化し、内部の組織がまだ回復途中の段階から、待ったなしで24時間体制の育児がスタートします。
ここが産後の身体づくりや腰痛ケアにおいて最も難しく、慎重にならざるを得ないポイントなのです。
体幹で支えにくいと、育児の負担が腰へ集まりやすくなります
では、身体を内側から支えるインナーマッスルの働きが十分に発揮されにくい状態で、毎日の育児動作を行うとどうなるのでしょうか。
人間のお身体はとても賢く作られています。
どこか一つの働きが休んでいても、日常生活を送るために「他の場所」が代わりに頑張って動こうとします。
これを専門用語で「代償動作(だいしょうどうさ)」と呼びます。
そして、その「代わりに無理をして頑張りがちな場所」の代表格こそが、腰まわりの表面の筋肉なのです。
具体的な育児の場面を思い浮かべてみましょう。
1. ベビーベッドや床からの抱き上げ
赤ちゃんを抱き上げるとき、本来であれば足の筋力、股関節の柔軟性、そして体幹の支えをバランスよく使い、身体全体で赤ちゃんの重さを受け止めたいところです。
しかし、体幹の引き締めや固定がうまく機能していないと、身体の中心を安定させることが難しくなります。
その結果、お腹側の支えを使えないまま、腰を強く反らせたり、逆に腰だけを丸めて強引に持ち上げたりする動きになりやすくなります。
1回だけの動作であれば、腰も耐えられるかもしれません。
しかし、育児ではこの「抱き上げ」を1日に何十回も繰り返します。
2. 授乳やおむつ替え時の姿勢
授乳中は、どうしても赤ちゃんの顔をのぞき込むため、頭が前に出て背中が強く丸まった姿勢が長時間続きます。
おむつ替えも、床や低いベビーベッドで行う場合は前かがみの姿勢が長く続きます。
この姿勢を崩さずに支え続けるため、腰や背中の表面にある大きな筋肉(背筋群)が、休む間もなくずっと過剰に緊張し続けることになります。
3. 長時間の抱っこや寝かしつけ
抱っこをするときは、赤ちゃんの体重という大きな負荷が身体の「前側」にかかります。
前へ倒れてしまいそうな重さに抗うため、無意識にお腹を前に突き出し、上半身を後ろに反らせ、腰の上に赤ちゃんを乗せるような格好で支えてしまうことがあります。
本来であれば、足骨盤・体幹・背中といった身体全体のチームワークで分担すべき仕事を、腰という一部分の筋肉だけに長時間押し付けていれば、そこが疲弊して悲鳴を上げ(腰痛となり)、ガチガチに固まってしまうのは当然の帰結と言えます。
ですので、産後の腰痛を考える際には、「腰の筋肉の強さ・硬さ」だけを見るのではなく、「身体全体のチームワークで負担を分散できているか」という視点を持つことが極めて重要なのです。
「インナーマッスルが弱い=腰痛」と単純化しない
ここまでの話を聞くと、「やっぱりインナーマッスルを鍛えれば腰痛は治るんだ!」と思われるかもしれません。
しかし、ここは今回の記事の中で最もお伝えしたい、非常に大切なポイントです。
産後の腰痛という複雑な現象を、「あなたのインナーマッスルが弱いから腰痛になっているんですよ」と、たった一つの筋力不足に決めつけて片付けることはできません。
お母さん方の腰がつらくなる背景には、決して単一の原因ではなく、以下のような非常に多くの要素が複雑に絡み合っています。
- 毎日何時間にも及ぶ連続抱っこの時間
- 授乳やおむつ替えによる不自然な前かがみ姿勢
- 床からの無理な体勢での立ち上がり方・抱き上げ方
- 反り腰になりやすい普段の立ち方の癖
- 股関節や太もも周りの筋肉の硬さ・動かしにくさ
- 毎晩の夜泣き対応による深刻な睡眠不足と身体の疲疲労
- 出産による骨盤周りや腹部組織の回復段階(個人差)
同じ「産後3ヶ月」であっても、赤ちゃんの体重も違えば、夜まとまって寝てくれるかも違い、ご家族のサポート体制も一人ひとり全く異なります。
だからこそ、「とにかく筋肉をつければすべて解決する」というような単純な話ではないのです。
インナーマッスルとは、あくまで「腰にかかる強大な負荷を、身体全体へスムーズに分散させるための要素の一つ」として捉えるのが最も自然で科学的です。
産後のお身体は、どこか一部分だけを切り取って評価するのではなく、
姿勢・呼吸・股関節・脚・体幹、そして毎日の育児動作までを「一つのつながり(チーム)」として総合的に見ていく。
この視点を持つことこそが、根本的な改善への一番の近道となります。
いきなり腹筋運動を頑張らなくて大丈夫です
「インナーマッスルが大切なら、今日からさっそく腹筋運動を頑張らなきゃ!」
そう思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、焦らないでください。
いわゆる「仰向けになってグッと上体を起こす腹筋運動(シットアップ)」と、身体の深い部分で体幹を穏やかに支える感覚を取り戻すことは、まったく別の体の使い方です。
無理に上体を起こすような強い負荷をかけると、かえって腰の骨に強い圧迫力がかかったり、首や腰の痛みを悪化させたりする危険性すらあります。
特に腹直筋離開などが見られる場合には、お腹の中央がぽっこりと大きく盛り上がるような運動は避け、お身体の状態に応じた極めて穏やかな動きから始めることが推奨されています。
まずは、いきなりハードな筋トレをするのではなく、次のような小さな意識からスタートしてみましょう。
- 椅子に深く腰掛け、息をふぅーっとゆっくり長く吐いてみる
- 抱っこをするとき、無意識に腰を反らせすぎていないか自分の姿勢に気づいてあげる
- 立ち上がるときに、腰の力だけで起き上がるのではなく、足の裏で床をしっかり押してみる
- 動きの中で呼吸を止めず、リラックスして息を吸って吐くことを意識する
産後の運動再開については、分娩方法や体調の回復段階に応じて、段階的に進めていくことが専門的にも勧められています。
重い負荷をかけて強く鍛えることよりも前に、まずは「今、自分はどんな体の使い方をしているのかな?」とご自身の身体の現在地を知ること。
そこがすべてのスタート地点となります。
前回の記事「産後のインナーマッスルはいつから鍛えていい?焦らず進める身体づくりのタイミング」でも、段階的なステップについて詳しく解説しておりますので、運動を始める具体的な時期が気になる方は、ぜひあわせてご覧ください。
骨盤だけではなく、身体全体を見ることが大切です
「産後ケア」や「産後の骨盤矯正」という言葉を聞くと、どうしても「骨盤の歪みさえ整えればすべて解決する」と思われがちです。
もちろん、妊娠・出産を経た骨盤まわりの状態や、それに伴う姿勢の変化に目を向けることは非常に大切です。
しかし、当たり前のことですが、お母さんは「骨盤だけ」で毎日のお世話や育児をしているわけではありません。
- 骨盤を内側から安定させる「体幹(インナーマッスル)」
- 足を外側や内側にスムーズに動かす「股関節」
- 床をしっかり踏みしめて踏ん張る「脚や足裏」
- 赤ちゃんを優しく抱き抱える「腕や背中」
- そして、それら全体を滑らかにつなぐ「日常の身体の使い方」
これらすべてが、ひとつのチームとして連携して働いています。
ですので当院では
- 「骨盤矯正だけをやればいい」
- 「インナーマッスルだけを鍛えればいい」
- 「腰の痛む場所だけを揉めばいい」
といったように、どれか一つを「唯一の原因」として決めつけるような施術や指導はいたしません。
お一人おひとりの身体全体のつながりや、日々の育児環境に目を向けていくことが、安全で確実な回復への鍵となります。
なお、産後の腰の強い痛みが長く続いている場合や、歩行・立ち上がりなどの日常生活に支障が出ている場合は、無理をして自己流の体操やストレッチを繰り返さず、一度医療機関や専門知識を持った接骨院等へご相談いただくことをお勧めいたします。
まとめ|産後の腰は「支える・動かす・休ませる」をセットで考えましょう
産後の腰痛とインナーマッスルの関係は、「筋力が弱くなったから腰が痛い」というような、単純な一言で表せるものではありません。
妊娠・出産という大きな出来事を経て身体の使い方のモードが変わり、その未完成な状態のまま、毎日ハードな抱っこや授乳が繰り返されます。
その中で、身体を内側から支える働きが使いにくくなっていれば、腰や背中という特定の場所が負担を代わりに背負い込み、悲鳴を上げてしまうのです。
なので、
- 骨盤まわりのバランスを見る
- 体幹の支える力を見る
- 股関節や脚の動きを見る
- 日常の抱っこや授乳の姿勢を見る
- そして、何よりもしっかり身体を休ませる
このどれか一つに偏るのではなく、「身体全体を一つのチーム」として捉えて、総合的にアプローチしていきましょう。
本日より美翔接骨院も営業を再開しておりますが、お盆休み明けは、生活リズムの変化や蓄積した疲労から、身体に痛みや重だるさが出やすい時期でもあります。
無理にペースを上げようとせず、まずはご自身の身体を労わりながら、普段の生活リズムへゆっくり戻していきましょう。
あとがき
今日から夏季休業が明け、いよいよ営業再開です。
休み明けの今朝、ベッドから起きて真っ先に気になったのは、体重の数値ではなく、「自分の身体、今日はちゃんとスムーズに動くかな?」ということでした。
まずは肩をゆっくり回してみる。 少し股関節を曲げてしゃがんでみる。
昨日までの移動や休みの疲れが残っていないかを、じっくり自分の感覚で確認してみました。
そのあとで体重計に乗ってみたところ、表示は「60.9kg」でした。

お盆休み期間中はご家族での食事など普段と違うペースになる機会もありましたが、大きく数値を崩すことなく、良いコンディションをキープして戻ってくることができました。
昔の自分であれば、休み中に少し食べ過ぎたりすると、すぐに焦って「明日から食事を極端に減らさなきゃ」「明日は倍トレーニングしよう」と、一日で完璧に帳尻を合わせようとしていたかもしれません。
でも、長年自分のコンディション管理に向き合う中で、考え方が大きく変わりました。
- 一食少し多く食べたなら、その後の数食でゆっくり整えればいい
- 運動ができない日があったなら、翌日からまたいつものペースに戻せばいい
- 身体が疲れているなら、無理に新しいトレーニングを追加せずしっかり休む
一日の結果や一瞬の数字に一喜一憂せず、「数日から一週間くらいの全体の流れの中で整えていく」という風に考えるようになってから、身体づくりもメンタルも、非常に安定するようになりました。
今回の「産後のインナーマッスルと腰痛」のお話も、本質的にはまったく同じです。
「今日は教わった呼吸法ができなかった」
「もう産後半年を過ぎてしまったからダメだ」
そんな一日だけの出来事や、一つの数字だけで、身体の成否が決まることは絶対にありません。
身体を内側から支える力も、日常の姿勢も、適切な休息も、育児中の体の使い方も含めて、トータルで少しずつ良い方向へ整えていけば良いのです。
お盆休み明けの今週は、焦って100%の力でダッシュしようとせず、まずはご自身の身体のエンジンをゆっくり温めてかけ直すくらいの、穏やかな気持ちで過ごしていきましょうね。
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投稿者プロフィール

- 美翔接骨院 院長
国家資格『柔道整復師』
キネシオテーピング協会認定『キネシオテーピングプラクティショナー』
キネシオテーピング協会認定『キネシオテーピングトレーナー』
日本ストレッチング協会認定『ストレッチングトレーナー』
日本コアコンディショニング協会認定『ひめトレインストラクター』
内面美容医学財団公認『ファスティングカウンセラー』
内面美容医学財団公認『プロフェッショナルインストラクター』






